2024年01月23日 [日常あれこれ]
1月の大野家 医療費かけ過ぎてしまった件
こんにちは、獣医師の大野です。
先日毎年恒例の【全身のんテナンス】をしました。
全身のんテナンスとは、お察しの通りのんさんの全身のメンテナンスでして、
血液検査など簡単にできるものだけでなく、
麻酔をかけないと出来ないような処置をまとめてやることです。
今回のラインナップはこちら
➀歯石取り
➁カテーテル採尿して尿検査
➂肛門腺洗浄
C足裏バリカン
D体表に存在する、この1年でこさえた腫瘤を切除
➀の歯石は
⇧こんな感じです。別に痛がったりとか歯がグラグラするとか
そういう症状は全くないのですが、奥歯に歯石がついてます。
普段歯磨きはしてませんが、なんとなく気になった時に爪楊枝でカリカリするのと
毎日歯磨きスナックを食べているのでまだいい方かもしれません。
この程度の歯石除去のために麻酔をかけるのはためらいますが、
他にもやることがあるならついでにって感じです。
➁の採尿は普通は麻酔なんてかけずにできるんですが、
のんさんのメンタルはおぼろ豆腐ぐらいの弱さでして
出来なくはないけど心に深い傷を負うらしいのでこのタイミングで。
➂の肛門腺洗浄は、普通の猫は必要ないです。
ただのんさんの場合、肛門腺はたまるもののどうやら外に出すための穴がなく、
穴がないから絞れません。
なので、貯まった肛門腺に直接針を刺して中身を抜き、
更に生理食塩水を注入しては吸い出すというのを何度か繰り返し、
中を洗浄しています。めんどくさっ!
C足裏バリカンも起きた状態で可能ですがせっかくなので。
のんさんのような短毛の猫は基本的には必要のない処置ですが、
のんさんは何故か足裏だけは毛が長く、放置すると滑ってしまいます。
何のために足裏だけ毛が長いのか、謎です。
ただただ手間をかけてもらう為だけに生えているような印象です。
めんどくさっ!
➄体表の腫瘤はほぼ毎年取っています。大きさは5mmにも満たない程度の
かなり小さいもので、普通は気付きません。
よく「さすがは獣医さん!ちゃんと気付くのね!」と言っていただくのですが、
違います。私の手柄ではないです。
本人が「なんかくっついてるにゃ!きになるにゃ!」ともの凄く気にしてしまい、
ビショビショになるほど舐めるため、そりゃあさすがに気が付きますよ。
でも見つけた時に毎回麻酔だと月1ぐらいになってしまいそうなので
見つけたら携帯にメモ。どの辺の場所にあったのかの記録を溜めておき、
年に一回まとめて切除しています。
ただのイボなら良いですが、のんさんの腫瘤は何度か
【肥満細胞腫】という診断を受けています。
犬だと余命宣告するぐらいの怖い腫瘍で、猫ではそこまでではありませんが、
病理の検査に出すと「発生したらその都度取りましょう」的なことを言われるので
めんどくさいけど仕方ない!
【めんどくさいけど仕方ない!】のオンパレードな【全身のんテナンス】です。
やることが多いので、自分の出勤日にやってしまうと
「自分の子のケアのために仕事時間を使ってお給料発生させる」ことになってしまいます。
これは良くない!ということで、ちゃんと休みをとってやりました。
因みにメインディッシュの腫瘤というのは
このくらいのサイズ感。5mmあるかないかといったところです。
これが右肩と右膝にできていたのでサクッととって1〜2針分縫っておしまいです。
でも正直ここまでは何てことない。本当に面倒なのはココから!
普通なら気付かない程度の腫瘤に気付くほど神経質なのんさん、
おハゲにされて糸で縫われてて気づかないわけありません。
ここからは「どんな手を使ってでも絶対傷を舐めたい猫」と
「どんな手を使ってでも絶対に舐めさせたくない飼い主」の、
双方譲らない、絶対に負けられない戦いが誕生します。
絶対傷口を舐めさせたくない飼い主の武器
その1:エリザベスカラー
右膝外側の傷は簡単に口先が届くところですのでエリザベスカラーが必要です。
普通はcatサイズもしくはcatLサイズのどちらかがピッタリなはずなのですが、
ここでものんさんのメンドクサイ部分が露呈します。
【のんさん 実は手足が長い問題】
普段ののんさんを見てて「手足が長いな〜」と思う人はいないでしょうし、
むしろ「手足短いな〜」と思われている気がしています。が、実は長いんです!
↑証拠写真。子猫の時はこの長さ。
おそらく体幹部の肉が下に垂れ下がっているために、
肩から肘、腰から膝までが体に埋もれているので短く見えているのですが、
のんさんが本気を出すと実は手足は長いのです。
エリザベスカラーをするとそのことに気づきます。普通の猫は
これぐらい顔が隠れていれば余裕なんですけど、のんさんは
これぐらいでないと、長い手足を上手に曲げて口が届いてしまいます。
ちなみにのんさんが使っているエリザベスカラーはダックスフンド用、それも
8キロ前後のかなり大きいダックスが使うサイズが丁度良いです。
これのお陰で膝部分の傷口は絶対に舐められないので嬉しい限りですが、1つ問題が…
絶対傷口を舐めたい猫の武器
その1:ごはんが たべられにゃい!
このエリザベスカラーがピッタリなダックスフンドは、犬の中でも鼻が長い犬種です。
なので、エリザべスカラーのおかげで傷口は舐められませんが、
彼らは長い鼻を生かしてご飯を食べることはできます。
でものんさんはと言うと・・・
鼻の長い猫って、居ないですよね・・・
のんさんも鼻の長さは普通の猫です。
つまり、口がお皿に届く前にカラーがぶつかってしまい、
ご飯を食べることも水を飲むこともできなくなります。
となると、時々エリザベスカラーを外して監視下でご飯を食べさせるか、もしくは
鳥のお母さんのように一粒ずつ口に入れてやらなければならないのです。
それだけでも面倒なのですが、のんさんは元々一度にご飯をまとめて食べると
吐いてしまうので、一回にあげられるご飯はせいぜい15〜20粒程度、
というわけで2〜3時間おきにこの作業をしないと1日量が食べられないのです。
普段病院にお泊りの時は自動給餌機で夜中にご飯を与えていましたが、これも使えません。
なので、朝出勤して仕事が終わった後も0時ぐらいまではのんさんに付き添い、
仕事が休みの日の日中はスタッフにお願いし、
スタッフが帰った後の20時ごろには病院に行って
4時間ぐらいのんさんタイムをしていました。1週間毎日…地味に疲れる!
絶対傷口を舐めさせたくない飼い主の武器
その2:エリザベスウェア
エリザベスカラーをしているから不要かと思いきや、
カラーで守れるのは膝部分だけ、右肩の部分はカラーでは守れません。
口は直接届きませんが、猫なので後ろ足が届いてしまうのです。
と言うわけで、直接後ろ足の爪が引っかからないように
エリザベスウェアを着せて防御します。
当院では避妊手術の後などに、よくこのエリザベスウェアを貸出しています。
お散歩している犬でお洋服来ている子も、よく見かけますよね?
みんな楽しそうに散歩してますし、
「エリザベスカラーよりエリザベスウェアの方が良い!」 っていう方多いんですが・・・
絶対傷口を舐めたい猫の武器
その2:ウェアきらいにゃ!かなしいにゃ!
⇧かわいそのんさん
残念ながら犬と違って猫はウェアが苦手な子が非常に多いです。
体に何かが巻き付くというのがとても苦手で動けなくなる子が多発します。
のんさんも例外ではなく、ウェアを着ると数歩歩いては倒れ込んでしまいます。
普通は数日で慣れるのですが、彼の場合テンションもダダ下がりのようで、
悲しくて、悲しすぎて、ストレスからか普段は絶対用がないと入らない
自分のトイレの中で引きこもったり…
絶対傷口を舐めたい猫の武器
その3:のんちゃんは・・・もうしぬんだ!
エリザベスカラーとエリザベスウェアをしたことで、
自分はとても重病なのではないかと思い込んでしまったのんさん。
しまいには声まで出なくなってしまいました。
普段どれだけ鳴いても枯れることなんてないのに、弱〜い声で「ニャー・・・」
話しかけても返事しないことも多く、当然自分からおしゃべりすることもなくなり、
いつもの素っ頓狂な感じはなくなり、ちょっと老け込みました。
↑証拠写真。目も開けられないほど憔悴。
もう自分は死んでしまうんだと思っているかのようなこの態度…
かわいそう…って思ったけど、ちょっと待って!死なないから!
米粒程度のポチッとしたやつ、それを2つ取っただけだから!
そんなんで死ぬはずないから!
…と言ってみたところでのんさんの耳には届きません。
「もう だれも しんじない」みたいな顔を向けてくるのんさん。
こんなことされたら、私にできることはのんさんのメンタルのケアだけです。
まずはエリカラを外す!
カラーがついているとご飯が食べられないこともストレスですが、
おそらく毛づくろいできないこともストレスです。
なのでまずはセルフケアをしてもらおう。
のんさんは普段そんなに一生懸命毛づくろいをする方ではありませんが、
猫にとっては毛づくろいは精神安定の意味もあるので、
もちろん監視下ですが、させてあげます。
左半身は存分にやっていただいて結構です。
ていうか君、たまごやきみたいだね。
まあ、そこも大丈夫。お腹の段々が服着てるとばれます。
ん〜右側だけど、内側なら大丈夫
と、ここまで来て、右側の外側を始めたら傷口を手でガードします。
手が足りなくて写真はありませんが、代わりにガードしている私の指を
必死で毛づくろいしてました。あたしゃそんなに毛深くないよ!
ひとしきり終わったら、今度は飼い主からのメンタルケアを。
普段自宅では膝の上に乗ってくるのに、病院では決して乗らないのんさん。
甘えている姿を他人に見られるのが恥ずかしいのか、ちょっとツンとしているのですが、
今はそんなこと言ってられない!と言うかのように、夜ののんさんタイムでは
ず〜〜〜っと膝の上にいました。2時間ぐらい、体勢も変えられず。
すご〜く腰が痛くなるので途中で姿勢を変えたいのですが、
のんさんは姿勢を変えられるのが嫌いなので我慢!
水飲みたくても膝の上にいたら我慢!トイレも我慢!
そんなわけで帰る頃にはクッタクタ、夜間救急のお仕事があった日は
夜間が終わった後に行ったので、自宅についたのは2時を回ってました。
アラフォーには辛い…
そんなこんなで猫も飼い主もともに大変な1週間を過ごし、
でもおかげで思ったよりも早く抜糸が出来ました。
抜糸が終わったころに病理検査の結果も返ってきましたが…
ほ〜れ見ろ!やっぱりな。2つとも肥満細胞腫だわ…
猫の肥満細胞腫、単発の場合と多発の場合があるようですが、
のんさんは間違いなく多発のバージョンですね。
きっとまたやらなければならなくなるでしょう。
私も年々歳を取っていきますので、いつまで頑張れることやら…
その時まで気力と、体力と、お金を準備しておかなければ…と思っていた矢先、
1/20(土)飼い主、限界を迎える
のんさんのこと以外にも1月は色々多忙だったのと、
夜中の喘息が結構酷くて寝不足だったのでついに限界を迎えました。
元々私は院長のように「いつでも元気!」な人ではないのですが、
その分体調不良には体が慣れており、そう滅多に休んだりはしません。
が、ついに土曜は早退させていただき、翌日もお休みを頂きました。
早退とは言ってもただ帰ってすぐ寝て、と言うわけにはいきません。
私がゆっくり休むために絶対的に必要な作業、それは【のんさんを遠ざけること】です。
のんさんはどう思ってるか知らないですが、正直病気の時は…足手まといです。
でもまずは土曜のこの時間にやってる病院へ。
せめて点滴してほしい…と思いかかりつけに行きましたが、
「体調の悪い人は事前に予約してないとダメ」という謎のお断りをされ、
(体調良い人は診るの?体調良い人って何しに来るの?)
唯一やってた病院は私が入ってから出るまでの間
他の患者さんは1人も居なかったのですが、
感染症を疑われて隙間風の入る隅っこで20分待ち、
診察時間は1分弱、会計出るまで更に40分待たされました。
私が獣医であることは知られていたので、帰る際に
「私は土日も日によっては夜間も犬猫の診療するのに、
自分が病気の時はどこも診てくれないので困ってましたが
診ていただけて良かったです。ありがとうございました」
とお礼なんだか何なんだかよくわからない挨拶をして帰ってきました。
会計に40分かかるとか…うちの病院だったら大反省会ですよ。
その後帰宅したところ、のんさんは一人でリビングをダッシュしてました。
飼い主には
「今度は自分が看病するのだと張り切っているんだろう」
と映りましたが、 院長曰く
「いつもより早く帰ってきて得した気分になっているだけだろう」と。
テンション高めののんさんを捕獲し、キャリーバッグに詰めて再度病院へ。
車中私の耳には
「のんちゃんが かんびょう するのに〜。しんぱいだにゃ〜」
と主張するのんさんの声が聞こえていましたが、院長曰く
「『楽しい気分だったのに〜出せ〜!』 って言ってるだけですよ」
とのこと。そうなの?私が間違ってるの?熱があるから?
そんなこんなでのんさんを病院において、引きこもるための物資を買い物して帰宅しました。
しっかりお休みを頂いたので晴れて今日復帰しました。
無理のきかない年齢になってきてるんですかね〜
今月は猫も飼い主も医療費がかかりすぎてしまいましたが、
健康でいるのが一番の節約なので気を付けなくては!と思いを新たにしました。
寒い日が続きますので、皆様もくれぐれもお気を付けください。
先日毎年恒例の【全身のんテナンス】をしました。
全身のんテナンスとは、お察しの通りのんさんの全身のメンテナンスでして、
血液検査など簡単にできるものだけでなく、
麻酔をかけないと出来ないような処置をまとめてやることです。
今回のラインナップはこちら
➀歯石取り
➁カテーテル採尿して尿検査
➂肛門腺洗浄
C足裏バリカン
D体表に存在する、この1年でこさえた腫瘤を切除
➀の歯石は
⇧こんな感じです。別に痛がったりとか歯がグラグラするとか
そういう症状は全くないのですが、奥歯に歯石がついてます。
普段歯磨きはしてませんが、なんとなく気になった時に爪楊枝でカリカリするのと
毎日歯磨きスナックを食べているのでまだいい方かもしれません。
この程度の歯石除去のために麻酔をかけるのはためらいますが、
他にもやることがあるならついでにって感じです。
➁の採尿は普通は麻酔なんてかけずにできるんですが、
のんさんのメンタルはおぼろ豆腐ぐらいの弱さでして
出来なくはないけど心に深い傷を負うらしいのでこのタイミングで。
➂の肛門腺洗浄は、普通の猫は必要ないです。
ただのんさんの場合、肛門腺はたまるもののどうやら外に出すための穴がなく、
穴がないから絞れません。
なので、貯まった肛門腺に直接針を刺して中身を抜き、
更に生理食塩水を注入しては吸い出すというのを何度か繰り返し、
中を洗浄しています。めんどくさっ!
C足裏バリカンも起きた状態で可能ですがせっかくなので。
のんさんのような短毛の猫は基本的には必要のない処置ですが、
のんさんは何故か足裏だけは毛が長く、放置すると滑ってしまいます。
何のために足裏だけ毛が長いのか、謎です。
ただただ手間をかけてもらう為だけに生えているような印象です。
めんどくさっ!
➄体表の腫瘤はほぼ毎年取っています。大きさは5mmにも満たない程度の
かなり小さいもので、普通は気付きません。
よく「さすがは獣医さん!ちゃんと気付くのね!」と言っていただくのですが、
違います。私の手柄ではないです。
本人が「なんかくっついてるにゃ!きになるにゃ!」ともの凄く気にしてしまい、
ビショビショになるほど舐めるため、そりゃあさすがに気が付きますよ。
でも見つけた時に毎回麻酔だと月1ぐらいになってしまいそうなので
見つけたら携帯にメモ。どの辺の場所にあったのかの記録を溜めておき、
年に一回まとめて切除しています。
ただのイボなら良いですが、のんさんの腫瘤は何度か
【肥満細胞腫】という診断を受けています。
犬だと余命宣告するぐらいの怖い腫瘍で、猫ではそこまでではありませんが、
病理の検査に出すと「発生したらその都度取りましょう」的なことを言われるので
めんどくさいけど仕方ない!
【めんどくさいけど仕方ない!】のオンパレードな【全身のんテナンス】です。
やることが多いので、自分の出勤日にやってしまうと
「自分の子のケアのために仕事時間を使ってお給料発生させる」ことになってしまいます。
これは良くない!ということで、ちゃんと休みをとってやりました。
因みにメインディッシュの腫瘤というのは
このくらいのサイズ感。5mmあるかないかといったところです。
これが右肩と右膝にできていたのでサクッととって1〜2針分縫っておしまいです。
でも正直ここまでは何てことない。本当に面倒なのはココから!
普通なら気付かない程度の腫瘤に気付くほど神経質なのんさん、
おハゲにされて糸で縫われてて気づかないわけありません。
ここからは「どんな手を使ってでも絶対傷を舐めたい猫」と
「どんな手を使ってでも絶対に舐めさせたくない飼い主」の、
双方譲らない、絶対に負けられない戦いが誕生します。
絶対傷口を舐めさせたくない飼い主の武器
その1:エリザベスカラー
右膝外側の傷は簡単に口先が届くところですのでエリザベスカラーが必要です。
普通はcatサイズもしくはcatLサイズのどちらかがピッタリなはずなのですが、
ここでものんさんのメンドクサイ部分が露呈します。
【のんさん 実は手足が長い問題】
普段ののんさんを見てて「手足が長いな〜」と思う人はいないでしょうし、
むしろ「手足短いな〜」と思われている気がしています。が、実は長いんです!
↑証拠写真。子猫の時はこの長さ。
おそらく体幹部の肉が下に垂れ下がっているために、
肩から肘、腰から膝までが体に埋もれているので短く見えているのですが、
のんさんが本気を出すと実は手足は長いのです。
エリザベスカラーをするとそのことに気づきます。普通の猫は
これぐらい顔が隠れていれば余裕なんですけど、のんさんは
これぐらいでないと、長い手足を上手に曲げて口が届いてしまいます。
ちなみにのんさんが使っているエリザベスカラーはダックスフンド用、それも
8キロ前後のかなり大きいダックスが使うサイズが丁度良いです。
これのお陰で膝部分の傷口は絶対に舐められないので嬉しい限りですが、1つ問題が…
絶対傷口を舐めたい猫の武器
その1:ごはんが たべられにゃい!
このエリザベスカラーがピッタリなダックスフンドは、犬の中でも鼻が長い犬種です。
なので、エリザべスカラーのおかげで傷口は舐められませんが、
彼らは長い鼻を生かしてご飯を食べることはできます。
でものんさんはと言うと・・・
鼻の長い猫って、居ないですよね・・・
のんさんも鼻の長さは普通の猫です。
つまり、口がお皿に届く前にカラーがぶつかってしまい、
ご飯を食べることも水を飲むこともできなくなります。
となると、時々エリザベスカラーを外して監視下でご飯を食べさせるか、もしくは
鳥のお母さんのように一粒ずつ口に入れてやらなければならないのです。
それだけでも面倒なのですが、のんさんは元々一度にご飯をまとめて食べると
吐いてしまうので、一回にあげられるご飯はせいぜい15〜20粒程度、
というわけで2〜3時間おきにこの作業をしないと1日量が食べられないのです。
普段病院にお泊りの時は自動給餌機で夜中にご飯を与えていましたが、これも使えません。
なので、朝出勤して仕事が終わった後も0時ぐらいまではのんさんに付き添い、
仕事が休みの日の日中はスタッフにお願いし、
スタッフが帰った後の20時ごろには病院に行って
4時間ぐらいのんさんタイムをしていました。1週間毎日…地味に疲れる!
絶対傷口を舐めさせたくない飼い主の武器
その2:エリザベスウェア
エリザベスカラーをしているから不要かと思いきや、
カラーで守れるのは膝部分だけ、右肩の部分はカラーでは守れません。
口は直接届きませんが、猫なので後ろ足が届いてしまうのです。
と言うわけで、直接後ろ足の爪が引っかからないように
エリザベスウェアを着せて防御します。
当院では避妊手術の後などに、よくこのエリザベスウェアを貸出しています。
お散歩している犬でお洋服来ている子も、よく見かけますよね?
みんな楽しそうに散歩してますし、
「エリザベスカラーよりエリザベスウェアの方が良い!」 っていう方多いんですが・・・
絶対傷口を舐めたい猫の武器
その2:ウェアきらいにゃ!かなしいにゃ!
⇧かわいそのんさん
残念ながら犬と違って猫はウェアが苦手な子が非常に多いです。
体に何かが巻き付くというのがとても苦手で動けなくなる子が多発します。
のんさんも例外ではなく、ウェアを着ると数歩歩いては倒れ込んでしまいます。
普通は数日で慣れるのですが、彼の場合テンションもダダ下がりのようで、
悲しくて、悲しすぎて、ストレスからか普段は絶対用がないと入らない
自分のトイレの中で引きこもったり…
絶対傷口を舐めたい猫の武器
その3:のんちゃんは・・・もうしぬんだ!
エリザベスカラーとエリザベスウェアをしたことで、
自分はとても重病なのではないかと思い込んでしまったのんさん。
しまいには声まで出なくなってしまいました。
普段どれだけ鳴いても枯れることなんてないのに、弱〜い声で「ニャー・・・」
話しかけても返事しないことも多く、当然自分からおしゃべりすることもなくなり、
いつもの素っ頓狂な感じはなくなり、ちょっと老け込みました。
↑証拠写真。目も開けられないほど憔悴。
もう自分は死んでしまうんだと思っているかのようなこの態度…
かわいそう…って思ったけど、ちょっと待って!死なないから!
米粒程度のポチッとしたやつ、それを2つ取っただけだから!
そんなんで死ぬはずないから!
…と言ってみたところでのんさんの耳には届きません。
「もう だれも しんじない」みたいな顔を向けてくるのんさん。
こんなことされたら、私にできることはのんさんのメンタルのケアだけです。
まずはエリカラを外す!
カラーがついているとご飯が食べられないこともストレスですが、
おそらく毛づくろいできないこともストレスです。
なのでまずはセルフケアをしてもらおう。
のんさんは普段そんなに一生懸命毛づくろいをする方ではありませんが、
猫にとっては毛づくろいは精神安定の意味もあるので、
もちろん監視下ですが、させてあげます。
左半身は存分にやっていただいて結構です。
ていうか君、たまごやきみたいだね。
まあ、そこも大丈夫。お腹の段々が服着てるとばれます。
ん〜右側だけど、内側なら大丈夫
と、ここまで来て、右側の外側を始めたら傷口を手でガードします。
手が足りなくて写真はありませんが、代わりにガードしている私の指を
必死で毛づくろいしてました。あたしゃそんなに毛深くないよ!
ひとしきり終わったら、今度は飼い主からのメンタルケアを。
普段自宅では膝の上に乗ってくるのに、病院では決して乗らないのんさん。
甘えている姿を他人に見られるのが恥ずかしいのか、ちょっとツンとしているのですが、
今はそんなこと言ってられない!と言うかのように、夜ののんさんタイムでは
ず〜〜〜っと膝の上にいました。2時間ぐらい、体勢も変えられず。
すご〜く腰が痛くなるので途中で姿勢を変えたいのですが、
のんさんは姿勢を変えられるのが嫌いなので我慢!
水飲みたくても膝の上にいたら我慢!トイレも我慢!
そんなわけで帰る頃にはクッタクタ、夜間救急のお仕事があった日は
夜間が終わった後に行ったので、自宅についたのは2時を回ってました。
アラフォーには辛い…
そんなこんなで猫も飼い主もともに大変な1週間を過ごし、
でもおかげで思ったよりも早く抜糸が出来ました。
抜糸が終わったころに病理検査の結果も返ってきましたが…
ほ〜れ見ろ!やっぱりな。2つとも肥満細胞腫だわ…
猫の肥満細胞腫、単発の場合と多発の場合があるようですが、
のんさんは間違いなく多発のバージョンですね。
きっとまたやらなければならなくなるでしょう。
私も年々歳を取っていきますので、いつまで頑張れることやら…
その時まで気力と、体力と、お金を準備しておかなければ…と思っていた矢先、
1/20(土)飼い主、限界を迎える
のんさんのこと以外にも1月は色々多忙だったのと、
夜中の喘息が結構酷くて寝不足だったのでついに限界を迎えました。
元々私は院長のように「いつでも元気!」な人ではないのですが、
その分体調不良には体が慣れており、そう滅多に休んだりはしません。
が、ついに土曜は早退させていただき、翌日もお休みを頂きました。
早退とは言ってもただ帰ってすぐ寝て、と言うわけにはいきません。
私がゆっくり休むために絶対的に必要な作業、それは【のんさんを遠ざけること】です。
のんさんはどう思ってるか知らないですが、正直病気の時は…足手まといです。
でもまずは土曜のこの時間にやってる病院へ。
せめて点滴してほしい…と思いかかりつけに行きましたが、
「体調の悪い人は事前に予約してないとダメ」という謎のお断りをされ、
(体調良い人は診るの?体調良い人って何しに来るの?)
唯一やってた病院は私が入ってから出るまでの間
他の患者さんは1人も居なかったのですが、
感染症を疑われて隙間風の入る隅っこで20分待ち、
診察時間は1分弱、会計出るまで更に40分待たされました。
私が獣医であることは知られていたので、帰る際に
「私は土日も日によっては夜間も犬猫の診療するのに、
自分が病気の時はどこも診てくれないので困ってましたが
診ていただけて良かったです。ありがとうございました」
とお礼なんだか何なんだかよくわからない挨拶をして帰ってきました。
会計に40分かかるとか…うちの病院だったら大反省会ですよ。
その後帰宅したところ、のんさんは一人でリビングをダッシュしてました。
飼い主には
「今度は自分が看病するのだと張り切っているんだろう」
と映りましたが、 院長曰く
「いつもより早く帰ってきて得した気分になっているだけだろう」と。
テンション高めののんさんを捕獲し、キャリーバッグに詰めて再度病院へ。
車中私の耳には
「のんちゃんが かんびょう するのに〜。しんぱいだにゃ〜」
と主張するのんさんの声が聞こえていましたが、院長曰く
「『楽しい気分だったのに〜出せ〜!』 って言ってるだけですよ」
とのこと。そうなの?私が間違ってるの?熱があるから?
そんなこんなでのんさんを病院において、引きこもるための物資を買い物して帰宅しました。
しっかりお休みを頂いたので晴れて今日復帰しました。
無理のきかない年齢になってきてるんですかね〜
今月は猫も飼い主も医療費がかかりすぎてしまいましたが、
健康でいるのが一番の節約なので気を付けなくては!と思いを新たにしました。
寒い日が続きますので、皆様もくれぐれもお気を付けください。