2020年06月07日 [病気のこと]
狂犬病発生と予防注射に対する誤解の話
こんにちは、獣医師の大野です。
6月に入りました。まだ梅雨入りはしていませんが、先立っててるてる坊主を作ってみました。
院内には全部で17個飾られています。ぜひ、探してみて下さい。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
先日こんなニュースがあったのをご存じでしょうか。
狂犬病の感染確認 国内14年ぶり 静岡市在住のフィリピン人
犬を飼っている人であれば、【狂犬病】という言葉を聞いたことがない人は
いないのではないかというぐらい有名な病気です。
毎年春頃になると各自治体が主催して、公園などで集団予防接種を行っていたり、
春のシーズンを逃してもほぼ全ての動物病院でいつでも接種可能です。
誰もが知っていて耳馴染みのある病気なのに、最近この病気に関して間違った情報が
流れていると思うことがよくあります。
コロナ騒動で【ウイルスによる感染症】が身近に感じられている今だから、
14年ぶりの感染が確認された今だから、
発症したら致死率100%の恐ろしい病気だからこそ、
誤解している人が多いこの病気について、
今日はいつもより真面目に考えてみたいと思います。
【誤解 その1】
狂犬病は遠い外国の病気であって、日本にはないので関係ない
確かに1956年以降日本では発生していません。でも、遠い外国の病気という認識は間違いです。
今回の新型コロナウイルスも元々は外国の病気でしたが、
それでも日本には短期間で広まってしまいました。
感染様式は違うものの、安心はできません。
【誤解 その2】
人から人へ感染しないので、危険性は低い
人から人への感染は移植手術などわずかな例だけですが、狂犬病にかかるのは
人だけでなく全ての哺乳類が対象で、感染者の9割以上が犬からの感染です。
犬は最も身近な哺乳類ですので、危険性は低いとは言えません。
【誤解 その3】
狂犬病予防注射をしている犬が一定数いるので、たとえ日本に入ってきても狂犬病は流行しない。
一般的に流行しないようにするためには、そのワクチンを打っている犬が
日本全体の7割を超えていないと、流行していくようです。
日本の現状はどうかというと、【役所に登録している犬の7割】が接種しているそうなので、
一見大丈夫な気がしてしまいますが、そもそも役所に登録していない犬も沢山いますし、
最近は野犬が増えているというニュースも耳にします。
野犬に接種している人は恐らくいないので、
日本全体での接種率は4割程度ではないかと言われています。
つまり、日本に入ってきたら感染は広がります。
【誤解 その4】
海外から輸入する動物たちは動物検疫を受けているので、狂犬病の動物はそもそも日本に入ってこれない。
これは【正規のルート】に限定した話であれば正しいです。
ただ、危惧されているのは正規のルートではありません。
以下に、実際にあった事例をご紹介します
@不法なルートで海外から持ち込まれた子犬が感染しているケース。
A外国のコンテナ船の中にコウモリやネズミや猫などの小動物が勝手に乗り込み、
港に着いた瞬間に勝手に上陸。
B外国船で船員たちが飼育している無検疫の犬が、日本についた後に日本の港で捨てられて野犬化。
@はモロッコ⇔フランス間で実際に起こった事例で、Aはハワイにてコウモリであったようです。
Bは日本⇔ロシアでよくあるようですが、もしこの犬が狂犬病だった場合には
広がっていくのは間違いありません。
【誤解 その5】
うちの子は家の周りの散歩ぐらいしか外にも連れて行かないし、かからないと思うから注射しない
この誤解が一番多いと思います。が、これは間違いです。
狂犬病予防注射は法律で定められた飼い主の【義務】ですので、
自分の解釈で打たないと決めてよいものではありません。
私は、狂犬病予防注射は、車の車検と同じだと思っています。
例えば私が毎日自分の車のエンジンルームまでチェックし、ブレーキオイルを頻繁に交換し、
埃が1つもないように拭きあげ、ゴールド免許で常に安全運転で運転技術も非常に高いとしましょう。
でも、私の車が【車検を受けていない車】だったらどうでしょうか。
私がどんなに「いや、大事に管理しているし、絶対大丈夫だから!」と言っても
法律は私を許さないですし、その車で運転する私は無責任と言われても反論できません。
車検を受けるということは、私の車が客観的に見ても【安全】であるということの証拠なのです。
狂犬病予防注射も同じことが言えます。
『車と犬を一緒にするな』と言われそうですが、【生活に根付いていてとても近い存在】であり、
【状況が変われば人の命を奪うかもしれない存在】という意味では同じです。
その犬が咬む犬か咬まない犬かというのは正直全く関係ない話です。
飼い主さんがどう思うかではなく、飼い主以外の人がどうかということが重要なのです。
狂犬病予防注射はその犬のために受けるものではなく、
同じ社会に住む他人の生命を守るために接種するものだという認識が必要です。
コロナウイルス感染症対策では、自粛して経済を止めるべきなのか、
それとも自粛せずに経済を動かすべきなのか、様々な議論が飛び交っていました。
賛否両論ありますし、わからないことが多い新しい病気なので、
どうすることが絶対的に正しいというのは誰にも言えない状況でしたが、
狂犬病予防接種に関しては法律で義務化されていることですので、もはや議論の余地はありません。
犬の飼い主さんがこの病気を理解してしっかりと予防接種を受けさせ、
犬が嫌いな人たちも安心して生活できる社会、動物の存在を受け入れてくれる
社会になることを切に願っています。
◇◆おまけ◆◇
きになるにゃ・・・さわりたいにゃ・・・はむはむしたいにゃ!
6月に入りました。まだ梅雨入りはしていませんが、先立っててるてる坊主を作ってみました。
院内には全部で17個飾られています。ぜひ、探してみて下さい。
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先日こんなニュースがあったのをご存じでしょうか。
狂犬病の感染確認 国内14年ぶり 静岡市在住のフィリピン人
犬を飼っている人であれば、【狂犬病】という言葉を聞いたことがない人は
いないのではないかというぐらい有名な病気です。
毎年春頃になると各自治体が主催して、公園などで集団予防接種を行っていたり、
春のシーズンを逃してもほぼ全ての動物病院でいつでも接種可能です。
誰もが知っていて耳馴染みのある病気なのに、最近この病気に関して間違った情報が
流れていると思うことがよくあります。
コロナ騒動で【ウイルスによる感染症】が身近に感じられている今だから、
14年ぶりの感染が確認された今だから、
発症したら致死率100%の恐ろしい病気だからこそ、
誤解している人が多いこの病気について、
今日はいつもより真面目に考えてみたいと思います。
【誤解 その1】
狂犬病は遠い外国の病気であって、日本にはないので関係ない
確かに1956年以降日本では発生していません。でも、遠い外国の病気という認識は間違いです。
今回の新型コロナウイルスも元々は外国の病気でしたが、
それでも日本には短期間で広まってしまいました。
感染様式は違うものの、安心はできません。
【誤解 その2】
人から人へ感染しないので、危険性は低い
人から人への感染は移植手術などわずかな例だけですが、狂犬病にかかるのは
人だけでなく全ての哺乳類が対象で、感染者の9割以上が犬からの感染です。
犬は最も身近な哺乳類ですので、危険性は低いとは言えません。
【誤解 その3】
狂犬病予防注射をしている犬が一定数いるので、たとえ日本に入ってきても狂犬病は流行しない。
一般的に流行しないようにするためには、そのワクチンを打っている犬が
日本全体の7割を超えていないと、流行していくようです。
日本の現状はどうかというと、【役所に登録している犬の7割】が接種しているそうなので、
一見大丈夫な気がしてしまいますが、そもそも役所に登録していない犬も沢山いますし、
最近は野犬が増えているというニュースも耳にします。
野犬に接種している人は恐らくいないので、
日本全体での接種率は4割程度ではないかと言われています。
つまり、日本に入ってきたら感染は広がります。
【誤解 その4】
海外から輸入する動物たちは動物検疫を受けているので、狂犬病の動物はそもそも日本に入ってこれない。
これは【正規のルート】に限定した話であれば正しいです。
ただ、危惧されているのは正規のルートではありません。
以下に、実際にあった事例をご紹介します
@不法なルートで海外から持ち込まれた子犬が感染しているケース。
A外国のコンテナ船の中にコウモリやネズミや猫などの小動物が勝手に乗り込み、
港に着いた瞬間に勝手に上陸。
B外国船で船員たちが飼育している無検疫の犬が、日本についた後に日本の港で捨てられて野犬化。
@はモロッコ⇔フランス間で実際に起こった事例で、Aはハワイにてコウモリであったようです。
Bは日本⇔ロシアでよくあるようですが、もしこの犬が狂犬病だった場合には
広がっていくのは間違いありません。
【誤解 その5】
うちの子は家の周りの散歩ぐらいしか外にも連れて行かないし、かからないと思うから注射しない
この誤解が一番多いと思います。が、これは間違いです。
狂犬病予防注射は法律で定められた飼い主の【義務】ですので、
自分の解釈で打たないと決めてよいものではありません。
私は、狂犬病予防注射は、車の車検と同じだと思っています。
例えば私が毎日自分の車のエンジンルームまでチェックし、ブレーキオイルを頻繁に交換し、
埃が1つもないように拭きあげ、ゴールド免許で常に安全運転で運転技術も非常に高いとしましょう。
でも、私の車が【車検を受けていない車】だったらどうでしょうか。
私がどんなに「いや、大事に管理しているし、絶対大丈夫だから!」と言っても
法律は私を許さないですし、その車で運転する私は無責任と言われても反論できません。
車検を受けるということは、私の車が客観的に見ても【安全】であるということの証拠なのです。
狂犬病予防注射も同じことが言えます。
『車と犬を一緒にするな』と言われそうですが、【生活に根付いていてとても近い存在】であり、
【状況が変われば人の命を奪うかもしれない存在】という意味では同じです。
その犬が咬む犬か咬まない犬かというのは正直全く関係ない話です。
飼い主さんがどう思うかではなく、飼い主以外の人がどうかということが重要なのです。
狂犬病予防注射はその犬のために受けるものではなく、
同じ社会に住む他人の生命を守るために接種するものだという認識が必要です。
コロナウイルス感染症対策では、自粛して経済を止めるべきなのか、
それとも自粛せずに経済を動かすべきなのか、様々な議論が飛び交っていました。
賛否両論ありますし、わからないことが多い新しい病気なので、
どうすることが絶対的に正しいというのは誰にも言えない状況でしたが、
狂犬病予防接種に関しては法律で義務化されていることですので、もはや議論の余地はありません。
犬の飼い主さんがこの病気を理解してしっかりと予防接種を受けさせ、
犬が嫌いな人たちも安心して生活できる社会、動物の存在を受け入れてくれる
社会になることを切に願っています。
◇◆おまけ◆◇
きになるにゃ・・・さわりたいにゃ・・・はむはむしたいにゃ!