[日常あれこれ]
2023年08月23日
動物病院のヒヤリハット と おちゃめなのんさん
こんにちは、獣医師の大野です。
今年もキレイに咲きました!夏空にはひまわりが似合う!
↑なんかポストカードになりそうなぐらい素敵!
自宅と合わせて全部で100個ぐらいの種を、時期をずらして植えてます。
お墓参りの時に最低8本ぐらい持って行ければいいなあと思っているのですが、
お盆の時にピッタリ咲いたのは4本のみでした。
タイミング合わせるの、難っ! 9月のお彼岸に期待!
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【ヒヤリハット】という言葉、ご存じですか?
重大な災害や事故に直結する一歩手前の出来事のことで、
日常でよく耳にするのは交通関連のヒヤリハットです。
路地から子供が飛び出してきて轢きそうになったなどなど。
実際には寸前のところで事故を回避出来たけれど、一歩間違えば・・・というような
「ヒヤリ」としたり「ハッ」としたりする出来事のことを言います。
大なり小なり、どんな仕事にもヒヤリハットは必ずあると思います。
動物病院に関連するヒヤリハットとしては、
採血する際に注射器などを準備して診察台に置いたら、
すかさず犬が食べようとした ですとか、
診察に来ていた猫が物音に驚いて発狂し、
診察室を飛び出していきそうになった とか、
トリミング中に一瞬目を離した隙に、
犬が台から飛び降りようとした などなど
例を挙げればきりがないほどたくさんあります。
【ヒヤリハット】という言葉は
結果的に重大な事故が起こらなかった場合に使用する言葉ですが、
正直それは結果論で、事故にならなかったからラッキーではなく
ヒヤリハット自体を起こしてはいけないということになります。
ヒヤリハットを起こさないためには危険予測が不可欠で、それには
無限の想像力が必要になります。
動物たち個々の性格を理解して対応するのは勿論ですが、
「この子はそんなことはしないだろう・・・」と思っていても、
何か偶然が重なってパニックになれば予想していなかった行動に出る可能性もあります。
そういう意味で、私が動物病院での仕事の中で最も危険だと思っているもの、
それは【ホテルに来ている犬たちの散歩】です。
当院ではホテルに来ている犬たちは朝と夕方の1日2回の散歩をしています。
お散歩に行かないと排泄をしない犬もいますし、
なにより気分転換として重要であると考えています。
当院のケージは狭い上にドッグランなどもありませんので、
お預かり中はずっとケージの中で、さらに入院している子もいるので
騒がず静かにしていてもらうことになります。
それがたとえ1泊だったとしても、普段家の中を自由に動き回る犬たちにとっては
ストレスになっていることは間違いありません。
たとえ朝晩10分程度だったとしても、散歩が担う役割は大きいのです。
一方で、ホテルを行っている場所によっては、お散歩をしないところも数多くあります。
ドッグランを持っていて気分転換ができるから行かないところもありますし、
そういった気分転換ができる術を持っていないけれども
あえて散歩に行かないケースもあります。
ではそういうホテルがダメなホテルかと言われると、そうとも言い切れません。
個人的には散歩に連れて行かない方針を取っている理由もよ〜く理解できます。
ペットホテルの子の散歩は、飼い主さんが想像しているよりず〜っと大変で、
意識して行動しなければ、あまたのヒヤリハットを生むシチュエーションになります。
当院はペットホテルの規模を縮小しているため、最近は少なくなりましたが、
コロナ前のお盆期間中などは、多い時で犬だけで1日に15匹ぐらいいました。
複数匹同時に連れて行くのは注意力が散漫になって危険が伴うため、
基本的には1匹ずつの散歩になり、
1匹あたり10分だとしても2時間半かかる計算です。
炎天下に、朝晩2時間半ずつ、計5時間も散歩をし、
もちろん通常の診察業務もあるとなれば、当然疲れてきますので、
人間側の注意力も散漫になってきます。
そしてホテルに来ている犬たちにとっては、
すぐ隣のケージに知らない犬もいるような慣れない環境で、
いつもと違う散歩コースで、散歩ですれ違う犬も知らない犬、
リードを持っているのもよく知らない人・・・当然いつもとは違った行動が出てしまいます。
病院からかなり離れてしまってから1歩も動かなくなり、
炎天下10キロを超える犬を抱いて帰らなければならなかったり、
抱っこさせてくれるならまだしも、触ろうとすると本気咬みするため、
途中で院長に電話して口輪やエリザベスカラーを持ってきてもらったこともありました。
既に大変さがお分かりいただけたかと思いますが、
一番怖いのはこれではありません。
私が最も恐れていること、それは【逃亡】です。
リードを離してしまう…というのは絶対にあってはならないことですので、
絶対にリードを離すことがないよう、いつでも腕にグルグル巻きにしています。
↑盛ってないです。いつもこれぐらいしてます。
散歩中犬が引っ張ることで紐の痕が腕に結構しっかり残ります。
そのまま帰りにスーパーに寄ったりするので、 なにかそういうプレイをした直後の人みたいな目で
見られたりしている気が・・・。
そういうわけで、私とリードが離れることは恐らくないでしょう。
問題なのは、犬本体から首輪やハーネスが外れることです。
私が小さいころは9割ぐらいの犬が、なんてことない革製の首輪をつけていました。
↑こういうの
この首輪、頑丈でとても優秀ですが、牛革なので固めで、
強く引っ張られると咳をしてしまったり首を痛める子が少なからずいたので、
現在では使用している犬がとても少なくなりました。
今は首輪にリードをつけている子は3割程度、
首輪より数が多くなったのはひも状の胴輪やハーネスです。
首への負荷はかなり少なくなったと思いますが、1つ問題点が。
胴輪とハーネス、実は簡単に外れます!
「え〜?散歩してて外れたことなんて一度もないよ」
と思われる方、いらっしゃるかと思います。
飼い主さんと散歩をするとき、ほとんどの犬は
こんな感じで散歩していると思います。
進行方向に進む犬を背後から制御するという使用方法では、胴輪やハーネスは優秀です。
が、ホテルでお預かり中の犬たちは、いつもと違う環境での散歩になるため、
「散歩に行きたくない」「そっちに行きたくない」「帰りたくない」など
座り込んだりして抵抗を試みたりするのですが、そんな時に頻繁によく取る姿勢
この状態になると、胴輪やハーネスは驚くほど簡単に脱げてしまうのです。
また、ご機嫌で散歩をしていたとしても、散歩中に他の犬に吠えられて怖かったとか、
救急車の音が怖かったとか、途中で苦手な雷が鳴ったとか、花火の音が聞こえ始めたとか、
「逃げたい!」のスイッチを入れるきっかけとなる出来事はいくらでもあります。
仮にもし散歩中にハーネスから抜けてしまったら、当然犬たちは走って逃げてしまいます。
散歩しているスタッフがウサイン・ボルトであれば別でしょうが、
残念ながらボルト氏はうちのスタッフではありません。
我々運動不足なスタッフが追いかけて捕まる程どんくさい犬はほぼいませんし、
コチラが追いかければ追いかける程、急いで逃げようとしますので逆効果です。
当然飼い主さんではないので、呼んで帰ってくる子なんてほとんどいないでしょう。
そのままどこかへ逃げて見つからなくなったり、あるいは途中で交通事故に遭ったりと、
そんなことを想像するだけで・・・
散歩はやめよう!という判断を責められません。
散歩に連れて行かないペットホテルでは、
そういう危険を回避するために行かない選択をしたのでしょう。
ケージ内でストレスがたまるのは可哀そうですが、
逃げて二度と会えなくなるリスクを考えると・・・納得ですね。
因みに時々猫にひも状のハーネスをつけて散歩させている方、見かけることがあります。
猫もその状況に慣れているのか、上手に散歩しています。が!
猫は本気出せば、それが例えのんさんのように、
性格も体型もぽやぽやしたタイプの猫であっても、
ハーネスを外すなんてものの数秒で出来ます。
多分、上手に散歩している子はその状況を楽しんでいて外さないだけです。
また、逃亡の可能性を秘めているのは胴輪やハーネスだけではありません。
実は首輪も、構造的にこれはどうなんだろう・・・というものを最近ちらほら見かけます。
私が気になっているのは、先ほどお見せした昔ながらの
このタイプのものではなく、
こういうカチャッとはめるタイプの首輪です。
この部分犬が噛んで欠けているものや、接続が甘く外れやすくなっているものが結構あります。
仮にもし何かの拍子で外れたりすると
こうなるわけで、首輪もリードも何の意味もなくなります。
そうなると
こうなるわけです。
さようなら、元気でね・・・ と遠くなっていく背中を見送っている場合ではありません。
ただ、カチャっとはめるのがすべてダメなわけではなく、
こういう風な構造のものは信頼できます。
これはカチャッとする部品部分の両脇にリングがついており、
両方のリングをリードのフックに引っ掛けるようになっています。
仮にカチャッとする部分が外れたとしても、
リードのフックによって輪っかの構造が保たれているので安心です。
(ダブルロックタイプと言うらしい・・・)
また、「首輪はかわいそうだから」と、かなり緩くつけている方、
気持ちはわかりますが、想像してみましょう。
散歩中の小一時間程度首輪を装着することと、
ネックレスのようになった首輪が抜けて逃亡もしくは車にひかれること、
本当に可哀そうなのはどっちなのか・・・
ではどれぐらいのキツさにすればよいのか。
指1本とか2本とか3本とかいろいろ言いますが、
私はとりあえず本人の呼吸を邪魔しないことを大前提にして、
散歩に出発する前に実際に色んな方向から引っ張ってみます。
それで抜けるようでは危険です。
私は心配性なので、散歩に行くときは
こんな感じで、必ず別ルートでもう1本リードをつけています。
犬にとってはいつもより厳重ですので、あまり楽しくないかもしれません。
でも、申し訳ないけど変えるつもりはありません。
お預かりしている子を無事に飼い主さんにお返しすることが最優先事項ですから。
ついでに言うと、時々でいいので
首輪やハーネスやリード、メンテナンスしてください。
元の色がわからないほど汚れていたり、触っただけで手が臭くなったり、
劣化して首の皮一枚でつながっているようなもの、結構見かけます。
ホテルやトリミングで来ていて時間がありそうなときは洗ってお返ししていますが、
時間的に難しくて出来ないとき、数日そのことで頭いっぱいになってます。
自分だって色がわからないほど汚れた服や、臭い服は着ないですよね・・・?
もう少し涼しくなれば、また日中散歩に出たりできるようになるでしょう。
その前にぜひ一度、使用している首輪やハーネスがちゃんと機能しているか、
よ〜く確認しておいてください。
◆◇おまけ◇◆
扉を開けて中に入りたいのんさん。
昔は引き戸だろうが何だろうが全て頭で押して開けようとしてましたが、
最近はやっと構造が理解できるようになってきました。
(↑遅くない?もう8歳ですけど)
器用ではないけど手を使って開けてます。
お!上手上手!
でもいざ入ろうと思って手を離すと
扉は閉まってしまいます。当然です。
これをず〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っと繰り返しています。
そして私もお願いされるまで、ず〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っと眺めています。
飽きません。顔は見えないですが、後頭部から「なんでだ?」て思ってるのがバレバレ。
これを専門用語で【あほな子】と言います。
大野用語では【かわええのお】と言います。
頑張れのんさん!