[日常あれこれ]
2023年05月07日
保定のススメ と 満身創痍なGW
こんにちは、獣医師の大野です。
まずはお知らせです。
5/14(日)の午後は、院長がいません!
獣医師会の総会に行くそうです。
ご注意ください!
院内飾りを変更しました。
毎年のことながらこの時期なんもネタがないので
こうなります。ネタがないと気球だの風船だの飛ばしがち。
小池さんが離脱したことにより新しく掲示板担当になりましたが、
スペースが少ないので結構ちゃんと埋まりますね。お知らせも少ないですし…。
今までの癖でむしろ作りすぎてしまいます。
今回は羊毛フェルトにも挑戦しました。
こちらは試作品なのですが、スワローズファンの院長に見せたところ、
「おお!かわいい!ペンギン!」と言われましたけど
ちげぇし。ぺんぎんじゃねぇし。ツバメの雛だし!!
ということでこうなりました。
ペンギンはこんな高いところに巣は作りません。
かーちゃんが小さく見えるのは遠近法ってことで。
病院前の鉢植えも華やかです。
ビオラの後ろのマーガレット、多分3年目です。
マーガレットは多年草で、花が終わると大胆に切って、
挿し芽という作業をず〜っと繰り返しているのですが、
ちゃんと咲いてくれない時もあるので現在は絶好調の状態です。
ビオラの寿命はあと1か月ぐらいなので、もうしばらくは楽しめそうです。
🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾🐾
この仕事をしていると色んな犬や猫に会いますが、
病院大好きで来てくれる子は全体の2割ぐらい、
残りの4割は嫌そうな顔をしながらじっと我慢し、
3割は「すごく嫌なことしたら咬むぞ!」とか「隙あらば逃げよう!」タイプ、
そして1割ぐらいが「嫌なことしなくても咬む!」という感じです。
しつけがなされないまま大きくなって手が付けられなくなってしまったり、
そもそも人間に触られたことがないような野良猫も来院します。
飼い主さんが「私なら触れるから大丈夫!」という場合もありますが、
そうは言っても難しい検査とか入院とか、飼い主さんのいない状況で
動物を押さえなければいけない場面はどうしたって存在するのです。
この動物を押さえる作業のことを【保定】といいますが、
よほど友好的ではない限り保定をしないわけにはいきません。
勿論、私たち医療者が咬まれるのは困る!というのもありますけど、
私たちが咬まれてビックリして手を離した場合、
台から落下してケガをしてしまったり、そのまま走って逃げて交通事故・・・
ということにもなりかねません。
つまり、我々医療者だけでなく、動物を守るためにも必要なのです。
既に咬むことが予想される場合には、初めからエリザベスカラーをしたり、
犬の場合は口輪をしたり、猫の場合はバスタオルで巻いたり洗濯ネットに入れたりと
手を変え品を変え何とか保定をすることになります。
ただ、しつけをされていない動物を飼っている方の中には
「動物の嫌がることはしたくない」というモットーのもと
しつけに取り組まなかった方もいらっしゃるため、
エリザベスカラーや口輪をすることに対して拒絶反応を示す方もいらっしゃいます。
「本人は嫌がってるのに可哀そう・・・」
「そんなものつけられて可哀そう・・・」
「本人の負担になることはしたくない・・・」
でもそれって・・・自分は咬まれるのが怖くて押さえられないのに、
私たちは咬まれても良いってことですかね・・・?
自分の子ではない犬に咬まれる私たちは可哀そうじゃないの?
もし医療者が咬まれてケガをして、そのせいで救えたはずの命を
救えなくなったら、犠牲になった子は可哀そうじゃないの?
保定が本人の負担になるからと検査や治療を行わなかった場合、
具合悪い状態がこの先もずっと続くのは可哀そうじゃないの?
仮に咬まれた勢いで手を離して落下した場合、
「それも仕方のないこと」と思ってくれるんだろうか・・・。
咬まれて仕事が出来ない期間、私たちの生活を保障してくれるんだろうか…。
そんなことを考えると、エリザベスカラーや口輪ごときで
そうなる可能性を回避できるなら、しっかり使用しようというのが私の考えです。
別に一生そのまま生活しろってわけではないですからね。
どうしても嫌なら・・・たとえ咬まれようがどうなろうが、
自分のペットなわけですから、飼い主さんに保定していただくしかない!
ちなみに獣医療業界には【保定7割】という言葉があります。
これは「注射や採血、検査が成功するかどうかは、獣医師ではなく、
動物を押さえている人の技術にかかっている」ということです。
実際診療しているとその通りだな〜と思うことも多々あります。
保定が上手であれば、短時間で作業が終わるため、動物への負担も少なく、
注射も痛がることなく終えることが出来るのでトラウマにならず、
獣医師や保定者が咬まれたり動物が落下するという事故も防ぐことが出来ます。
ただ、7割は言い過ぎかな…
保定技術4割、動物の性格3割、獣医師の技術3割ぐらいが私の体感です。
仕事を始めたばかりの新人スタッフにとって、保定はとても難しい作業の一つですが、
これは口で説明されればできるようになるわけではなく、
とにかく数をこなすことが大切です。
犬と一言で言っても超小型犬は1kg台、私が診察した中で一番大きい犬で
86kgという超大型犬もいました。
↑86sはこの種類、土佐犬です。(画像はJKCのHPより)
それでも体調悪くて痩せてた時らしい。
因みに大きさ比較するとこんな感じ。
実際には土佐犬を扱うときには他の動物は一切出せません。危ないので。
体格も足の長いタイプの子、ダックスのように足が短い子、
太っている子と痩せている子、特定の場所を触られると発狂する子など、
本当に多種多様ですので、「こうすれば大丈夫」という鉄板保定法はありません。
また、保定者の体格によっても保定法は変わります。
私は腕の長さが控えめなので、大きい犬の場合には腕の長さが足りませんが、
その代わり腕も体幹部も肉は多めな為、動物とうまいこと密着することが出来ます。
一方で黒田さんは腕の長さを活かして大きい犬を押さえるのは楽でしょうけど、
動物と密着するのは難しいはずです。
押さえる対象どうぶつの大きさ、肉付き、性格、自分の体型、検査の種類、
処置をする獣医師の癖など、考慮する内容が多岐にわたるため、
単純に考えて保定法は数百通りあるのではないかと思います。
また、犬と猫で保定の方法は全く違います。
犬は仲良くなって声をかけながら、動かないようにしっかり保定する方が良いですが、
猫の場合は逆で、仲良くなろうと目を合わせてしまったらアウト!ということも多く、
また、猫は針の痛みには比較的強いものの、手足をぎゅっと掴まれたり、
励ましの大きい声の方が苦手なことが多いので、
発狂スイッチを入れないように、スタートから静か〜にすることがポイントです。
↑スイッチが入ったが最後こうなる
また、犬の場合には台から飛び降りると骨折したりすることが結構あるので、
どんな場合でも絶対に手を離すわけにはいかないのですが、
猫の場合にはその心配がほぼないので、いっそ拘束を解いて
本人が落ち着くまで待ってから仕切り直したり、手で掴まずに
バスタオルなどを巻いて面で押さえてあげた方が安心できることが多いのです。
まあ、実際には猫の発狂スイッチを入れてしまった時点でほぼ敗北ですので、
そうならないようにすることが一番ですが…
正直うちのスタッフも、経験年数、腕力、手足の長さ、得意な動物種など
みな少しずつ違いますし、百戦錬磨の人は誰もいません。
私も保定はそれほど得意ではありませんが、でも実はケガは少ない方です。
理由を考察してみると、仕事中だけでなく、街中でも動物を見ると数分かけて行動を観察し、
どう保定するのが一番良いのか頭の中でシミュレーションする変な癖があるからかもしれません。
(武井壮か!)
そして動物は追い詰められたら予測不能な行動をとることもあるので、
不穏な空気になる前のかなり早い段階からエリザベスカラーを装着しがちです。
10年以上この仕事をしていますが、自分がケガをするのは年に1回あるかないか程度です。
もしエリザベスカラーをするのを可哀そうがっていたら、
お互いにもっと大きなケガをしているのではないかと思います。
また、保定することに医療者が慣れていることは大事ですが、
それと同じぐらい、動物側も保定されることに慣れているかどうかが
診療がスムーズに、トラウマにならずに終わらせることが出来るかを左右します。
例えば病院での爪切りが大変な子であれば
実際に爪切りをしなくても良いので、お家でも爪切りをするときのように抱っこをし、
まるで爪切りをするかのように手先足先をモミモミしてみてください。
始めは10秒ぐらいからスタートして徐々に時間を伸ばして行けば
診察時の爪切りも日課の延長として少しずつ受け入れてくれるようになります。
この練習を行った後でご飯をあげたり散歩に行ったりすれば
ご飯や散歩がご褒美になりますので習慣化しやすいと思います。
「どうせできないから」と投げ出さず、地道にコツコツ向き合ってあげれば
動物たちの負担を少なくすることが出来ますし、
正直これは毎日一緒に生活する飼い主さんにしかしてあげられないことです。
それに、保定を飼い主さんが習得できると、家で薬を飲ませたり点眼したり
そういうことも苦労せずにできるようになりますし、動物の立場から言ったら
よくわからない謎な場所でよくわからない謎な人間に押さえられるよりも、
よく知っている飼い主さんに身を預ければ良いだけなので天と地ほどの差があります。
『この子は臆病だから攻撃してしまう』という方はなおのこと、
飼い主さんが保定をしたほうが動物も安心できると思います。
のんさんも数年前まではとにかく保定されることが嫌いで、
レントゲンを撮る際の数秒間すら我慢できませんでした。
でも院長が日々
↑無駄にプレッシャーかけてみたり
↑無駄に万歳を強制してみたり
↑なんの役に立つのかわからないこんな格好をキープさせたりすることを
ライフワークにしていたおかげで、今はへっちゃらになりました。
ありがたや〜
これから梅雨になると雨でお家から出られない日も増えると思いますが、
触れ合える時間が増えるからこそ、有効活用していただければと思います。
もし、「やってみよう!」という気持ちがあれば、是非ご相談ください。
その子の体格や性格に合わせた一番良さそうな保定方法を手取り足取り伝授します。
な〜んて偉そうに書いてみたものの、実は先日派手にケガをしました。
そう、猫に咬まれたのです。
↑こうなりました。モザイク入れたら肌質が変になっただけで隠せてませんね。
実は私を咬んだ犯人(犯猫?)はこれが初めてではなく、たぶん3回目です。
正直私の獣医師人生で私を咬んだ猫はたぶんこの子だけです。
紹介します、この方です。
8歳になったばかりののんさん
のんさんは基本的には大人しいですし、大嫌いな医療処置も
言って聞かせればちゃんと我慢して受け入れてくれます。
親バカではなく良い子だとは思うんですけど・・・
のんさんは自宅では飼い主の膝の上にいるのが好きなんですが、
お気に入りの場所なのでいつも結構テンションが高めです。
にゃっほい!
でものんさんとてもデカいので、ふざけてると膝から落ちそうになります。
なので、いつ体勢を崩しても良いように手を添えているのですが、
その手に突然本気咬みしてきました。
↑この尖った歯で貫きました。元々私の指をしゃぶるのが好き。
血だらけのまま「痛い!なんで咬むの!」と叱りましたが、
本人は楽しくてテンション上がってたのに突然怒られたので、
↑こんな感じの顔をしてしょんぼりしてしまいました。
何であなたがその顔するのよ。こっちがしたいわ!
さいばんちょう!のんちゃんにも いいぶんが あるにゃ!
のんさんの言い分としては、自分は深く咬んだけれども
私がそのまま手を引いたために5センチぐらいの長さに裂けたのだとのこと。
・・・いや、そもそも突然咬むあなたが悪い!DV息子め!
わ〜い!ひもだ〜!
猫に咬まれるのは犬に咬まれるよりも結構怖いことなのですが、
もう病院もやってないような時間帯でしたので、
もの凄く痛いけど流水で患部をゴシゴシ擦り洗いして自分で傷処置しました。
しょんぼりしていたのんさんも、翌朝にはもう何事もなかったように
「おはよう!」って走って来ましたので、まあ、水に流してやるか・・・と思いました。
が!
その数日後、【だるまさんが転んだ】をやってたら、通りすがりに突然ふくらはぎを咬まれ・・・。
なんか、マイブームになってる?
「のんちゃん、何でそういうことするの?
のんちゃんは【暴力にゃんこ】なの?【暴力にゃんこ のん】なの?
じゃあのんちゃん、BNNじゃない!」
暴力 にゃんこ のん
B N N
↑拳を見せつけるのんさん
その都度叱るんですが、本人は納得いってないようです。
私は「なんか最近、のんさんが突然咬むな〜」と思ってますけど、
のんさんはのんさんで「なんか最近、飼い主が突然キレる」とか思ってそうです。
困ったな〜。信頼関係が崩れてしまう・・・
これは早急に話し合わなければ!
というわけで、ここ最近毎日1時間ぐらいはのんさんとイチャイチャしつつ、
今後の私たちの生活について話合っていたのですが、
先日「さ、そろそろ寝るか〜」と体勢を変えたところ、
ギューン!と首に激痛が走りました。どうやら寝てもいないのに
寝違えたみたいになってしまったようで、首の可動域が極端に狭くなってしまいました。
なんだか踏んだり蹴ったりです。
よりによって今年のGWは馬場さんは家族で旅行、小池さんは泊りがけでフェス、
黒田さんはもう1つのアルバイトへと行ってしまったので、
来る日も来る日も私と院長の2人だけでの診療でした。
なので、カットなしのシャンプーなどは4番手の私がするはずだったのですが、
満身創痍で出来ない・・・
なのでこういうことに⇩
トリマーとしてはペーペーな院長によるシャンプー。
勿論私もやれることはやりましたので、GW中のシャンプーは
獣医師2人によるスペシャルバージョンになりました。
幸いりんちゃんとモカちゃんがとても良い子たちだったので良かったですし、
首も徐々に動くようになってますので良かったです。
あとはのんさんの悪癖を治さなきゃですね。
私以外の人のことは咬まないので不幸中の幸いです。