[病気のこと]
2022年01月22日
神経質な猫のメンテナンスと、○○食べれば大丈夫、は本当?の話。
こんにちは、獣医師の大野です。
またコロナの感染者が増えてきましたね。
流山市内でも、学級閉鎖など出ているようです。
これに伴い、当院でも再び入室人数の制限を行います。
入室できるのは動物1匹につきお1人までとなります。
未就学児はカウントしませんが、小学生以上は1人とカウントします。
当院で感染が広がって閉院を余儀なくされると、
通院している沢山の動物たちが行き場を失ってしまいます。
病院を閉めなくてはいけないような事態に陥らないよう、
今一度、感染対策へのご協力をお願い致します。
前回紹介しませんでしたが、また院内飾りを変えました。
テーマ:雪の結晶
隙間が多いとビニールシートの汚れが目立ちます・・・
はい、手抜きです。分かってます。
ハロウィンから結構頑張ってたので、燃え尽き状態です。
バレンタインが終わるまではこのままで行きたい・・・行けるかな?
馬場さんも長く飾れるものにしたかったらしく、
節分⇒難しいうえに2/3以降変えなければいけない
バレンタイン⇒2/14までしか飾れない
雪⇒去年雪だるま作った・・・
と悩んだ挙句、テーマは【受験】
長いと3月中旬ぐらいまで受験シーズンですからね。
うまい手を考えたもんです。
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私は【偏頭痛持ちの神経過敏】です。
他人よりも五感が発達しているようで、それ故苦手なことが多く、
眩しい光、ジメジメした空気、香水の匂い、甲高い音、硬い生地の縫い目、人混み…
放っておくと激しい頭痛や蕁麻疹や喘息発作にみまわれます。
正直とても生きづらいです・・・。
臭いに関しては全てがダメなわけではないのですが、
「汚い系のにおい」が特に苦手で、嗅いだ瞬間に咳が止まらなくなってしまいます。
受付周辺にいても、奥の犬舎で誰かがオシッコすると気づいてしまうぐらいの嗅覚です。
「汚い系のにおい」はこの仕事にはつきものですので、少し感じ取った段階で
無意識のうちに、自動的に鼻呼吸から口呼吸に切り替わるようになりました。
でもこの嗅覚のせいで良かったこともあります。
不必要な優れた嗅覚のおかげで、院内の汚さに敏感になるので、
当院は他の動物病院と比較しても格段にきれいだと自負しています。
付き合わされるスタッフは大変でしょうけど・・・
ただ、潔癖症なわけではないので、臭いがしない系の汚さ、
例えば本や書類が散乱しているとか、乾いたタオルがたたまれずに積み重なってるとか、
棚の上のホコリとか、そういうのは正直気になりません。
実は私の周りにもう一人神経質な奴が・・・
それは、のんさんです。
何度か書いたことがありますが、のんさんは比較的神経質な猫です。
↑おてての味を確かめるのんさん
身体に水滴が少しついただけでそこをひたすら舐め、
インターホンの音が鳴ると明らかに動揺し、
自分のしたウンコが臭いと片付けてあげるまで大騒ぎです。
先日しつこいぐらいのんさんのベッドに誘導されるのでついて行ってみたところ、
ベッドの中に入れている毛布がのんさんの寝相で片寄ったらしく、
恐らく「寝心地が悪いので直してほしい」的なことを言っていたようです。
ベッドメイクしてあげたら中に入って満足気でした。
何だかんだ色々言ってきますけど、何を言っているのかがほぼわかるので
それに応えてあげているうちにやたらと喋る猫に成長しました。
そもそも猫と言う動物自体が、そんなに喋らないだけで本当は色々と
要求があるのかもしれませんが、それにしてものんさんは細かいことを気にします。
1か月ぐらい前、のんさんをドライヤーで乾かしている際に
尻尾に5ミリ大のカサブタのようなものを発見!
「のんちゃん、これどうしたの?」と聞いてみましたが、返答無し。
まあ、何か傷があったのかもな〜、私には言えないこともあるのかもな〜と
のんさんのプライバシーに踏み込まないように、気にしないことにしたのですが、
2週間ほど経って見てみたところイボの様になっていました。
のんさんも気になるようで頻繁に舐めるように。
そんなに気になるほどの大きさじゃないけどな〜
イボが気になっているのんさんが気になってしまう私。
色とか大きさとか大したことないけど、気になるなら取った方が良いかな〜
でものんさんは痛みに弱いから麻酔で寝かせてじゃないとできないな〜
でもそれだけのために麻酔かけるのもな〜
と思っていたのですが、もう一つ麻酔をかけなければ出来ない処置が!
それは、肛門腺絞りです。
肛門腺絞りはふだん外来でされていくと思いますが、
実はのんさん、肛門腺絞りができません。
溜まっているのは外側から触ってわかるのにどうも出ないので、
以前麻酔をかけた際によ〜く観察をしてみたところ、
どうやら、のんさんの肛門周囲にはあの臭い液体が出るための穴がないのです。
普通の猫は
こうなっていて、丸印のところから出るんですけど、のんさんの場合は
穴があるべきところに何らかの白いものがあります。
角栓みたいなものかと思い引っ張ってみたのですが
組織の一部のようで、どうやってもこれは取れませんでした。
肛門腺はしっかり溜まっており、本人は気にしているので何とかしなくてはいけません。
いずれにせよこういう処置は起きている時はできないので、
麻酔をかけるならこの肛門腺の処理と尻尾のイボを同時に取ることにしました。
ついでに爪も短く切ろう。あ、あと歯もチェックしておこう。あ、耳掃除もしちゃおう。
久しぶりの血液検査をした上で、麻酔をかけて処置しました。
肛門腺は
こんな感じで直に針を刺して、その穴から液体を絞りました。
注射の針ですけど、さすがに起きてるときは痛くて無理ですね。
破裂すると面倒なので、今後も定期的に処置していきます。
尻尾は生検トレパンと呼ばれる器具を使用しました。
↑こんなの。トレーニングパンツとは何の関係もない。
サイズは色々あるのですが、のんさんは6ミリという大きさを使って、
イボを丸く切り取り、糸で軽く縫い合わせました。
爪も歯も耳も、普段からメンテナンスしているので1分ぐらいで終了し、
全体でも麻酔時間10分以下ぐらいで終わりました。
切除したイボ、院長と「まあ、イボでしょうね〜」と言いつつ、
念のため顕微鏡で見てみたところ、
「んん?思ってたのと違うぞ・・・?これは・・・アレじゃない?」
と引っかかるものがあり、検査センターへ提出。
プロの病理医に見てもらいました。
そして、帰ってきた結果は・・・
肥満細胞腫
ああ、やっぱり・・・・
肥満細胞は「肥満な子にある細胞」と言うわけではありません。
細胞自体が大きめだから「肥満細胞」と言うだけで、
痩せていても「肥満細胞」は存在します。
肥満細胞腫はその肥満細胞の腫瘍で、
良い悪いで言ったら「悪性腫瘍」に分類されます。
ただ、犬の場合と猫の場合では印象がだいぶ変わります。
犬の場合の肥満細胞腫は「怖い腫瘍ランキング」でもかなり上位に来ますが、
猫の場合の肥満細胞腫は「悪性だけど大丈夫なことも多い」腫瘍です。
検査結果にコメントがありましたので読んでみましょう。
難しことがたくさん書いてありますが、わかりやす〜く言いますと
悪性腫瘍である肥満細胞腫と診断されます。
⇒やっぱり肥満細胞腫ですよ。
マージンは明瞭で腫瘍細胞の脈管侵襲像も確認されない
⇒腫瘍はちゃんと取り切れていますよ
再発や転移はありません
⇒同じところからまた出てきたり、他の場所に出たりとかもありませんよ。
稀に多発することがあり、同様腫瘤の新たな発生に注意が必要です。
⇒たまにいっぱいできることもあるから、新しいのが出来ないか気を付けた方が良いですよ。
とのことです。
イボ状のデキモノって、やっぱり検査してみないと見た目じゃわからないこと多いですね・・・
周辺毛刈りをしてあるので、へこんで見えます。
悪性腫瘍だったからと言っても、血液検査で異常が出たわけではありません。
麻酔をかける前の血液検査はいつもより良い値でしたし、
のんさんはご飯の質や量もしっかり管理しています。
例えば関節炎や膀胱炎など、生活習慣を気をつければ
予防ができる病気もあります。
でも、今回見つかったような腫瘍は防ぐことは正直難しいのです。
インターネットなどを見ると、書いているのが【獣医師などの専門家】なのか
【ものしり一般人】なのかは不明ですが、
「○○がガンに良い!」「○○を食べさせていれば大丈夫!」
のような記述を見ることがあります。
100%意味がないかと言えば正直分かりませんが、
例えば意味があったと仮定しても、個人的には
「横断歩道を渡るときに手をあげているかあげていないかの違い」ぐらいだと思っています。
道を渡るときに横断歩道を手をあげて渡る方が、手をあげずに渡るよりは
交通安全の観点から考えると良いのかもしれません。
でも、横断歩道を手をあげて渡っていても、交通事故に遭わないわけではありません。
手をあげた状態のまま車に轢かれてしまうことだってあるでしょうし、
逆に手をあげて渡らなかったとしても、轢かれない人は轢かれません。
なので、「○○を食べさせていれば大丈夫!」というのは
「手をあげて横断歩道を渡れば車に轢かれません!」というのに近いです。
そう言われると・・・「嘘だ〜!」って思いますよね?
ではのんさんは何のために食事に気をつかったりしているかというと、
防げる病気を防ぐことと、仮に避けられない病気になった場合に
治療に耐えられる体を作ることが目的です。
先ほどの交通事故の話で言えば、交通事故が避けられなかったとしても
健康体で事故に遭った場合と、満身創痍で事故に遭った場合とでは
その後の経過は変わってきます。
おおむね健康であること、のんさんの体の変化に気付くこと、
この2つは今までも気を付けていましたが、今回の件でもう一つ、
異常に気付いたら早めに検査してみること、
これも大切だなと思いました。
お陰様で、私の財布から諭吉先輩や一葉ねえさんが数名旅立たれました(泣)
やってくれて ありがとにゃ
と、のんさんが言っていると勝手に解釈して、
「性格の良いにゃんこだな〜」とよりのんさんが好きになる痛い飼い主。
ですので、今回の件に関していうと、
腫瘍ができていたことは残念だけど、早い段階で対処できてよかった!
そして今後も気になるものがあればちゃんと検査しよう!
という総評で良いかと思います。
早い段階で対処できたのは何故か…と考えると、
➀のんさんが神経質だから1センチにも満たないような腫瘤を気にしていたこと。
➁のんさんの行動を常々観察し、のんさんが気にしていることに飼い主が気付けたこと。
Bすぐに麻酔をかけられる程度にのんさんが健康をキープしていたこと。
➃年末調整の還付金が返ってきて私のお財布にお金が入っていたこと。
この4つはどれも外せなかったと思います。
ありがとう、神経質なのんさん!
ありがとう、神経質かつ適度に心配性な自分!
ありがとう、還付金を現金手渡しにしてくれた院長!
ありがとう、ATM少なくて還付金を預け入れしにくいみずほ銀行!
さようなら、諭吉先輩、一葉ねえさんたち!
◇◆おまけ◆◇
凄い写真をお見せしましょう。
撮ったのは私ではなく、おそらくトリマーの増子さんです。
当院ではトリミングの後、写真を撮って印刷し、お渡ししています。
増子さんから手渡されたカメラの中のSDカードから、
データを取り出そうとしたところ、すごい写真を発見しました。
被写体は、ミニチュア・シュナウザーの陸くん
なんですけど、この写真に辿り着くまでに試行錯誤していた際の写真がこちら
頭どうなってんの!!??
振りすぎてどっか飛んでっちゃった風。